君は、『那由多の軌跡』を知っているか。
『那由多の軌跡』は、2012年7月26日に日本ファルコムからリリースされたPSP専用ソフトである。2021年6月にまさかの高画質移植版がPS4ソフトとして発売されてから1年と少し。まだ記憶に新しいという人もいるだろう。
何処かの誰かにとってこのゲームが大切な思い出であるように、私にとっても『那由多の軌跡』は大切なゲームだった。私の貧相なゲーム人生の中で語れる数少ないゲームであるからだ。『ぐるみん』も面白かったけどね。
ともかくそんな思い出深い『那由多の軌跡』を、私は遊びつくしたい思いでいっぱいだった。とはいえゲームには終わりがあって、周回プレイは楽しいけれど、それ以上のものをくれることはない。周回プレイに飽きた時、私ははたと思いつく。
「あー、ゲームデータ覗きてー」
あの時子供だった私にはできなかったことも、成人を迎えた私になら出来る。そういう発想と、環境がある。
私はいそいそとISOファイルを用意すると、それをアンパックし始めた。用意するのは『7-Zip』でも『Universal Extractor』でもISOを展開できるなら何だっていい。そうやって出てきたファイル群を、私はワクワクしながら覗き込む。さながら女風呂を覗くスケベな田舎少年の心である。
フォルダを開けると未知の拡張子があった。
当時PSPを改造していた諸兄からすれば見慣れた拡張子もあったろうし、そうでないものもあった。PMF、AT3、IT3……何かわからぬ。いや何が入っているのかはわかるが……どうすればいいのだ。
ググる。
碌な情報がない。
死ねアフィカス。
私は古き2ch民がアフィカスを蛇蝎の如く嫌う気持ちを嫌という程思い知り、ようやっと見つけた情報があった。
ふむ、『FormatFactory』か……知らぬ者と思いつつマイPCにインスコ。
怪しみつつ入れてみたものの、案外使い勝手の良い子だ。
mp4をGIFに変換するのはお手の物。文書ファイルを読み上げさせたり、当然音楽ファイルを主だった形式に変換可能である。普通に今後使っていきたいソフトだ。
知恵袋では『FFmpeg』が最新じゃないので入れ替えなければならぬと書いてあったが、質問から8年、現在までアップデートを続ける『FormatFactory』の『FFmpeg』も当時のままではない。ちゃんと更新されて(最新版かは知らないが)いるので気にする必要はない。
これでAT3はするっとWAVに変換できた。AT3は音楽ファイルだったワケだ。
こうしてBGMとSEに関しては解決できた。できたからといってこのデータに使い道はないのだけれど……いや使っちゃ駄目だゾ?BGMに関してはサントラ持ってる私からしたら無用の長物なわけでしてハイ。
なおPMFも『FormatFactory』でmp4に変換できた。キミ優秀すぎへんか?結婚して……
残るはIT3クン。キミだよキミ。わかってんだよね、君が3Dデータであることは。しかしね、これを覗ける状態にしたいがその手の情報は乏しい。どうやらファルコム独自規格なのではという疑いがある。
というわけで、探した。その手の情報を。
で、あった。
IT3 Converter
神はここに居た。
こんなマイナー拡張子からobj+mtl、mqoファイルに変換するソフトがあるとは正直思っていなかった。『IT3 Converter』制作者である、ぽかん氏に感謝を。
でもね、こいつコマンドラインでしか動かねぇから。
私はコマンドプロンプトの使い方を知らなかった。そしてやはり調べてもよくわからなかった。とりあえずit3cnv.exeをコマンドプロンプトにドラッグ&ドロップ。
するとこんなのが出た。
C:>D:\it3cnv03\it3cnv.exe
Usage : it3cnv [-m] <file_name> [dest_path]
-m MQO形式で出力します.
file_name 対象it3ファイル.
dest_path 出力先.(省略可)
/? これを表示.
んにゃぴ……よくわかんないっピ……(ヤジュピー並感)
こっから進まへんし、どうすればえぇんやコレは……
私はこの問題を一週間放置した。
とはいえ諦めるワケにはいかないので重い腰を上げコマンドについて調べ始めた。
①こういうコマンドでまず実行したいファイルのあるドライブを指定するらしい。
cd /D (ドライブの名前):
②次に下記コマンドでit3cnv.exeのあるフォルダを指定。
cd (it3cnv.exeのあるフォルダのアドレス)
③callコマンドでit3cnv.exeを呼び出す。似ているがstartコマンドではit3cnv.exeを実行させられなかった。
call it3cnv.exe
④ここでようやく正常に動作させるまで出来た。ドラッグ&ドロップしただけのときはドライブの指定が上手くいっていなかったのがよくわかる。
D:\it3cnv03>call it3cnv.exe
Usage : it3cnv [-m] <file_name> [dest_path]
-m MQO形式で出力します.
file_name 対象it3ファイル.
dest_path 出力先.(省略可)
/? これを表示.
⑤指示に従って it3cnv [-m] <file_name> [dest_path] をコピペし、カッコ内を埋める。このとき事前にit3cnv.exeのあるフォルダに、変換したいIT3ファイルと出力先フォルダを作成しておくこと。
カッコ内にファイル名とフォルダ名を記入したら、カッコを消してenterで実行。下記はその例。
it3cnv [-m] test.it3 syuturyokusaki
⑥実行して添付GIFのように動作すればOK。指定した出力先にMQOファイルが吐き出されているハズだ。
⑦なお以下のように it3cnv [-m] <file_name> [dest_path] から [-m] を消して実行すると、obj+mtlで出力される。objファイルはWindows標準搭載の3Dビューアーやblenderなどで開くことが出来るので、こちらを推奨する。
it3cnv test.it3 syuturyokusaki
はい。
というわけで出来た。
一応モザイクをかけておくが、3Dビューアーで開ける。
やったねこれで念願のパンチラが出来るよ!
なおパンツの作り込みはされていなかった模様。無念。
さてさてそれはともかく、こうして3Dモデルを覗ける状態にしたところで湧いてくる疑問があった。それは「残され島の地下ってどうなってるのー?」という疑問。
というわけで覗くわよー。
抽出したobjファイルくんは、例えばキャラクターであると手、足、体、頭と分割された状態にある。これを一括読み込みして表示したいのだが、blenderくんや3Dビューアーくんでは残念ながら一括読み込みが出来ない。
そこで登場するのがMetasequoiaくんである。そこそこ歴史のある3DCGソフトウェアだ。彼はファイルの一括インポートが可能なんですね~コレが。というかblenderでも出来て欲しいよなそういうの。なおobjファイルくんをメタセコで開くとテクスチャが反映されないっぽいので、メタセコくんで開くにはobjではなくてMQOファイルを用意するといいよ。
はい。
開いたわよ。
例のごとく一応モザイクをかけておくが、残され島海中部に謎の突起物があるのがわかるだろうか。
ゲーム内での説明によると、この島は上空より飛来した遺物の蓄積により形成されたという。その謂れの通り、島の基部にはテラに見られるような突起物が生えていたのである。
とはいってもコレは私の読み込みミスによって生じたものかも知れず、鵜吞みにしないでもらいたいのが本音だ。もしかしたら既出の情報であった可能性すらあって、入手困難な攻略本に記載があったかもしれない。まぁ私としてはこうして残され島の秘密を知れて大満足である。
おしまい。